2018年は事実上「副業元年」の年となりました。
政府は同年1月に「モデル就業規則」から副業禁止の項目を除外し、また国家公務員の副業も非営利団体に限り許可しました。
また自治体でも職員の副業を認めるところが出てきましたし、大手企業や銀行などもも次々と副業を許可し始めています。
また、企業に勤務する人材を他の企業(ベンチャーやNPO、自治体など)へ一定期間派遣するサービスも出てきました。
こうした動きが少しずつ表面化していますが、多くの企業ではなかなか副業・兼業(以下、複業とします)を推進する動きが顕著かと言えば案外そうではありません。複業を許可している会社でも人数規模に対して1~3%くらいの人材しか複業していないというデータもあり(当社調べ)、複業する人数自体はインパクトに欠けるものと言わざるを得ません。
なぜ、こうなってしまうのでしょうか?
副業解禁している企業は、おそらく、「時代の流れ」「他社動向」「人員不足」など、明確な戦略がないまま副業を認める制度に変えてみたというのが本音のところのようにも見えます。企業によっては「人材獲得の”アピールの材料”」として開始したところもあるかもしれません。
実際に、リクルートキャリアが行った2017年2月の調査によれば、副業禁止していない企業の約7割は、「特に禁止する理由がない」からというものでした。同時期は副業先進企業でしたが、その後の導入企業の理由も、「(オープン)イノベーションの促進」「社員のスキルアップ」と、その理由は限定的と言わざるを得ません。
つまり、副業を解禁しても多くの企業には「メリットが感じられない」ということではないかと考えられます。
これは実は企業が副業解禁する際に「順番を間違えている」という言い方ができると考えます。
いきなり社外への副業を解禁するのもいいですが、その前に「社内で行う」ということが、重要と考えます。
例えば、どこの企業にも複数の職場を歩いた”ベテラン社員”がいらっしゃるともいます。最近は45歳以上は早期退職の対象にもなることも多いですが、まずはこうした社員から「社内複業」をして頂くことをおススメします。ベテラン社員の多くは、過去の経験を組織に活かせることなく、組織の都合で異動となり現組織に”甘んじている”社員も多いです。現に、2011年には雇用保蔵者(つまり社内失業に近い人)は人数に換算して600万人超もいると言われていました。これは全雇用者の10数パーセントの生産性が失われている計算になります。
企業はこうしたベテラン社員の活性化に力を入れたいの思うなら、こうした社員を社内で「複業」させることで、ベテラン社員の活性化と生産性の向上を両立させることができるのです。
また、最近は若手や女性社員の更なる成長を望む企業も多いですが、組織の壁や年齢が高い社員の層が厚く、活躍の機会を失っているケースも多々見られます。
こうした人材にも、社内で複業やボランティアとして他部門(或いはグループ会社)等の業務に従事させることにより、ここのスキルを高めつつ、会社全体の業務を体験することで社内の人材育成にも大変効果があります。
こうして、まずは社内の複業を進めてみることで人材育成の効果を見ながら、社外への複業へと進めていくことで、企業の人事戦略ができていくものと思われます。